2010年4月10日土曜日

住宅建設  地盤と基礎

●建物が傾きやすい地盤の地層構造としては以下の2点をチェックする。

  1. 建築物の支持力
  2. 圧密  (腐食土の場合クリープ沈下も)

これらは、自然の地盤と宅地造成した地盤の両方の観点から見る必要がある。

【自然の地盤】
軟弱な粘性土地盤、旧河川敷、田んぼ、ごみなどで埋めた場所、傾斜地など要注意。以下のように分けた場合、沈下は3-5の地盤に集中する。3,4の地盤は、河川や海水の影響で湖沼地が生じ、その湿地帯に植物(アシ、イグサ、ガマなど)が広がり、枯れて堆積してその繊維質が炭化して腐食土層形成する。その腐食土層の堆積が進むと、舟形の陸化(埋積谷)湿原が形成される。
  1. 山岳地
  2. 台地
  3. 沖積低地、海岸平野
  4. 大地の谷とその谷を埋めた沖積谷
  5. 埋立地、造成地
腐食土層が存在すると、通常の地盤に比べて、土粒子は植物繊維と水の堆積の1/5~1/15艇でお敷かないため、圧縮すると半分以下の厚さとなる。腐食土では圧密沈下だけでなく、時間とともにゆがみが少しずつ増大していくクリープ沈下が発生する。食物繊維が弱いばねのように抵抗して地盤を支えているためで、20年以上にわたって沈下が続く例も多い。
一般的な圧密沈下は、圧密試験で解析できるが、クリープ沈下は土質試験では解明できない。


【宅地造成地盤】
  1. 地山と盛り土(または埋め戻し土)にまたがって建設する場合。盛り土や埋め戻し土は十分に締め固められている必要がある。
  2. 厚さの異なる軟弱粘性土層からなる場合。粘性土層の厚さが場所によって異なると不同沈下が生じ、建物は傾く。
  3. 軟弱粘性土層が均一の厚さであっても、上部の荷重によって、不同沈下を起こす。


●地盤の良しあしの判断は以下の作業を通じて行う。
  1. 現地踏査・・・敷地の形状、地表面の状況を調べる。
  2. 敷地周辺の既存資料を集める。
  3. 地盤調査を行う。箇所数、方法は地盤踏査で判断。


●住宅の地盤の調査の種類には、SWS調査(スウェーデン式サウンディング調査)やボーリング調査がある。
  1. SWS調査(スウェーデン式サウンディング調査)・・簡易調査。軟弱層の有無とあった場合の層の厚さを調べる。住宅建設時に採用されがち。先端にスクリューのついた軸におもりで荷重をかけ、軸を回した時の沈下の具合を測定することによって土の強さを調べる。その値はWsw(おもりの重さN)、Nsw(軸の回転数、半回転させた数を1mあたりに換算)。指標としてはWswが1kNであり、かつNswが大きいほど、土の強度が高いことになる。戸建て住宅の地盤では、Nswが40以上の地盤は50kN/㎡の地耐力があるとされ、良好な地盤であると判断できる。また、Nswが40未満の場合でも、周辺ん尾土地の状況、地層構成が良好であれば、30kN/㎡用の布基礎、あるいはべた基礎といった基礎形状を採用して楯もを建設しても問題は生じない場合が多い。Nswが0で、おもりの侍従だけで沈むような軟弱な地層がある場合には、支持力と沈下の対策に浮いて十分検討する必要がある。SWS調査で得られた情報では、土の強さは評価できても、そのほかの土の性質(土の種類や含水比)がわからないため、沈下の可能性についての判断が難しい場合が多い。そのため現地踏査で、どんな地形(傾斜地、平地、丘陵地)なのか、皮や湿地が近くにあるか、周辺の建物や用へ気に亀裂がないかを確かめることが重要。三成分コーン貫入試験の併用が望ましい。
  2. ボーリング調査・・・土の強さ、圧密係数など、土の詳細な性質を把握する。不かく乱試料採取して土質試験を実施する。
●地盤改良
一般的な地盤改良の目的は

  1. 地盤沈下を少なくする
  2. 支持力を増大する
  3. 不均一性を是正する
ことである。
目的を達成するには、脱水して地盤内の空隙を少なくする。
盛り土の重さで水を絞り出す圧密工法は一般的だ。最終的な土の中の水圧が、盛り土以前の当初の水圧に戻るように管理する。支持力はこの段階でかなり改善されている。多くの造成地では、この水圧の回復を確認したうえで売り出しにかかっている。
腐食土層がある場合、のちのクリープ沈下を少なくするため、一般には盛り土をいったんかなり厚く施工して沈下を促しておいて、販売時に厚くした分を取り除いている。しかし、小規模開発では隣地敷地に影響するので、分譲後に敷地単位で実施すれば、隣地に影響がでる。腐食土層の分布する宅地を面的に改良することは、実質的には不可能。

住宅には以下の地盤改良工法が用いられる。建築の場合2cm以下の不同沈下に抑えたいが、技術者によって許容量が違うので依頼するときは要注意。


*大規模な宅地の場合
  1. 圧密促進工法(粘性度)・・・サンドドレーンペーパードレーンパックドレーンウェルポイント工法
  2. 密度増加工法(砂質土)・・・サンドコンパクションバイブロコンポーザー動圧密工法(重錘落下)
  3. (液状化防止工法)・・・グラベルドレーンパイプドレーン
*個別の戸建て住宅の敷地
  1. 置換・・・砂、砂利、セメントモルタル、固化剤、軽量材による浮き基礎
  2. 表層改良・・表層混合拡販(セメント、石灰、固化剤)
  3. 柱状改良・・ソイルセメント杭砂置換杭
  4. 注入・・セメント注入圧密割裂注入
  5. 小径杭・・細径鋼管杭ねじ付きコンクリート杭

●腐食土層
河川の流域や東京の江東地区などに見られるシルト・粘土質土は、クリープ沈下が少なく、いわゆる一時圧密の終了を管理目標としても、大過なく造成できる。
一方、腐食土層の存在する地域では、2次圧密(クリープ沈下)を管理して切れないため、沈下が安全に終了していない状態で引き渡されることが多く、比較的軽量な戸建て住宅であっても、腐食土層の地盤は沈下することがある。造成盛り土の影響で地盤そのものが二次圧密によって沈下し続けているからだ。支持層まで杭を打つと、家は沈下せずに周辺地盤が沈下して、玄関口、ブロック塀の沈下、排水溝の逆流や給水管の切断など、長い間にさまざまな問題が生じる。
腐食土層のある地盤では、とにかく被害を最小限にとどめることを目標とすべき。
腐食土層の地盤のおもな改良工法には、以下がある。ただし、完全に克服することはできない。

  1. 柱状改良:ドリルで地盤に穴をあけ、セメントと石灰の混合材などでかき混ぜて柱状の杭体をつくる。砂を柱状に押し込んで改良する方法もある。これにより、支持力の増加、沈下の若干の制御が期待され、表層の地盤や盛り土の不均一性にも対応している。しかし、設計のレベルで必要とされるデータはまだ十分とはいえず、経験的な判断も多い。
  2. 既製杭;細径の鋼管、節つきコンクリート杭のなどの帰省杭を、回転圧入や先堀挿入で設置する。

そのほか、注入剤を使用することもあるが、特殊なケースに限られる。腐食土層で行われている柱状改良にはいくつかのパターンがある。

腐食土層を突き抜けているものの、支持層までは達しないレベルに杭体(柱状改良)が作られたもの。基礎も多少沈下して、沈下による躯体の抜けあがりを防いでいる。
腐食土層を抜けないがその底近くまで杭体(柱状改良)が入り込めば、多少の沈下はあるが、顕著にはならない。
、腐食土層の半ば程度までしか杭体(柱状改良)を入れない場合では、かなりの沈下が起こる。ただし、べた基礎とすれば不同沈下量は少なくなるケースが多い。なお、支持杭と摩擦杭を併用すると不同沈下が起こる。
摩擦杭のモデルでは、杭の支持力と基礎面したの地盤の支持力が互いにプラスしていると考えられる(パイルドラフト基礎)。基礎の形式はべた基礎を基本として、地盤改良と併用するのが良い。

支持杭(細径鋼管の既製杭を利用した場合など)を利用した場合、基礎と地盤の間の空隙の発生や、地盤の沈下に伴って杭に対して下向きの力が働く現象(ネガティブフリクション)によって杭が沈下し、基礎が損傷することがある。


●住宅の基礎工事
地盤の強さに応じた基礎の構造形式の選択基準は、2000年の建設省(現国土交通省)告示に規定されている。
地盤調査は、近隣の建物の状況を調べたあと、建築する建物の四隅および中心部の5か所の地質をスウェーデン式サウンディング調査などで確認する。

地盤の長期許容応力度(kN/㎡)と基礎の構造形式は、平成12年1347号建設省告示に設計基準があり、
20kN/㎡未満・・・杭基礎
20kN/㎡以上30kN/㎡未満・・・べた基礎、杭基礎
30kN/㎡以上・・・布基礎、べた基礎、杭基礎
となる。
実際の施工においては、極端な軟弱地盤や明らかに不同沈下のおそれのある地盤でない限り、基礎底面の締め固めや割栗地業丁寧に行うことが第一である。




基礎形式については以下の通り。
布基礎・・・・全体または部分的に底盤を深く掘り下げ、基礎梁のせいを高くして合成を確保できるので、局部的応力や地盤の変動に対応できる。
支持地盤が傾斜していたり、一部だけ深かったりする場合は、軟弱な土をラップルコンクリートなどで置き換えたり、地盤改良をしたりして対処。底b何の幅は地盤の許容揚力度と建物の重量から求められるが、2000年建設省告示に規定。なお、1階の床の支持は、できるだけ同じ布基礎で行うのが望ましいが、束立て独立基礎を採用する場合は、束下の地盤を十分ん伊天敦、床面が不同沈下を起こさないように注意する必要がある。

べた基礎・・・・地盤が均等であればある程度(均等に50mm程度まで)の沈下を認める工法である。建物の下の地盤を十分に天敦、その上に鉄筋コンクリートの底盤をつくり、外壁周りでは基礎針を凍結深度以下に寝入れ市、内壁の土台の下にも基礎梁を配置。底盤は荷重を分散させる効果があるので、地盤沈下を低減させる。また、地震時に液状化現象が生じる場合には、床下に砂が噴出するのを底盤が抑えるので、液状化対策としても効果が見込める。一方、支持層に傾斜があったり建物荷重に偏りがあったりする場合には適さない。

杭基礎・・・・支持地盤の上に大変軟弱な層がある場合や支持層が深い場合、支持層に傾斜がある場合に適している。住宅用の小径鋼管杭を用いる場合は、くい打ち間隔を1.8-2m程度(軸組みの柱間隔)とする。ただし、杭を用いる場合は基礎梁の合成をチェックしなければいけない。建物は沈下しなくても周囲の地盤が沈下することがあるので、建物外周部の設備配管などはフレキシブルジョイントにする必要がある。


●基礎の配筋
2000年建設省告示1347号。基礎の種類ごとに、建物の回数や敷地の事態力の違いに対応する基礎形状と配筋を規定。なお、おさまり上の話としては、鉄筋径の35倍の定着長の確保や40倍以上の重ね継ぎ手などの確保は重要。
また、基礎に欠きこみがある場合、補強としてあばら筋と主筋の両方を補強する。
基礎に換気口を設ける代わりに、土台と基礎の間に板状のものを挟んで隙間を確保するネコ土台も普及しているが、これにより、基礎の欠き込みをなくし通気も確保できる。外張断熱工法を採用する場合、1階床下の断熱処理や、3階建て住宅に採用する際の強度の確認などに注意を要す。
配管などのために設ける開口部に関しても、おもに船団体力が開校のない場合と同等以上になるように補強する。ただし、直径が100mm以下の開口部であれば先端大力ははほとんど落ちない。100mmを超える開口部では、そのまわりに配するひび割れ防止用の鉄筋とあばら筋の間隔を通常の1/2にして、鉄筋量を2倍に増やす。複数の開口部を設ける時には、開口部同氏はそれらの直系の3倍以上話、それぞれ独立した開口部として補強する。開口部の直径は基礎梁成の1/3以下に抑え。
組み立て鉄筋で品質を高め、工期を短縮することができる。


●基礎のコンクリート
コンクリートは水和反応により、時間をかけて硬化する。大まかにいうと3日目で30%、7日目で50%が反応し、その後はゆるやかになり1月目で80%強が反応する。コンクリート表面にガラス質を3-4ヶ月で構築することは難しい。硬化初期に乾燥すると未反応のセメントが残り空隙が多くなるので、水分が大量に蒸発してひび割れは太くなる。一方、硬化してから何年も経過すると、空隙が少ないので蒸発する水分量が少なくなり、ひび割れ幅は細い。湿潤養生が重要。
なお、コンクリートの質を良くするには、中の水と空隙を少なくすることだ。そのためには、

  • 適正な原材料を使用する、
  • 水のないかたい生コンクリート(スランプ12cm以下)を使用する。
  • 水や空気を追い出すように十分に締め固める。
  • コンクリートの表面が指で押してもへこまなくなったら、接着剤であるセメントの水和生成物が内部の空隙を埋めつくせるように、十分な水を与えて養生する。これを給水養生と呼び、表面が水をはじくような高密度になるまで実施してガラス質をつくる。
  • コンクリートを直射日光から遮断する。
水については、固まる前は含有する水を減らす努力(スランプの調整、AE減水剤などの利用)をし、固まった後は、湿潤養生で水を与える。

なお、ひび割れが発生したら、すぐに透明のビニルテープを張って空気から遮断。補修までの間の養生を行う。
補修は、U字、V字型にはつって補修材を充填する方法が一般的。はつり作業がでると、振動で躯体を痛めてしまうケースもある。ひび割れのもっとも大きな弊害は、鉄筋の腐食を促進するということだ。鉄筋探査機で鉄筋の場所を探査して、はつり箇所は必要最小限とする工夫も大事。